歯科・歯科口腔外科・小児歯科

一般臨床医のためのMRI診断

一般臨床医のためのMRI診断

Diagnosis  with  Magnetic  Resonance  Imaging  for  General  Practitioner

 

はじめに 

 最近の画像診断法の進歩には目覚ましいものがあり、医療のあらゆる分野において貢献している。そのなかでMRI(magnetic resonance imaging)1980年にはじめて臨床応用が試みられ、現在ではその多くの特徴・利点ゆえに、ほとんどすべての領域に対して有用性が認められている。
顎口腔領域においても例外ではなく、診断および治療方針の決定に不可欠なものとなってきている。

 一方、一般臨床医にとってMRIは、日常診療において必要とする機会がほとんどないため縁遠い存在となっている。
しかし、MRIは今後さらに発展・進化し、避けては通れない画像診断法の1つになると思われる。

 それでは、MRIの特徴、読影法、さらに各疾患毎に具体的症例を交えてわかりやすく解説してみたい。

総論

[1]MRIとは

ある種の原子核は磁場中で固有の周波数の電磁波を吸収したり放出したりする。
この核磁気共鳴(nucler magnetic resonance:NMR)を利用した画像診断法がMRIである。
つまり、生体を静磁場(大きな磁石)中におき、電磁波(ラジオ周波数帯域の高周波)を与え、生体に存在する原子核の自転軸の向きを変化させることによって発生する信号をコイル(アンテナ)で受診し、コンピュータ画像処理をしたものである。
現在、MRIが基本的に対象としているのは、体内にもっとも多く分布し、かつ検出効率のよい水素の原子核中の陽子(プロトン)である。

[2]MRIの特徴

MRIは単純x線撮影やCT、その他の放射線学的検査に比べて幾つかの特徴があり、また、特異的な禁忌事項もある。

 

 1.MRIの長所

  1)X線被爆がない

  2)コントラスト分解能が高い

  3)任意に多方向の多断層像が得られる

  4)補綴物によるアーチファクトが限局性である

  5)造影剤を使用しなくても血管を描出できる

  6)同期撮影により動態観察が可能である

 

 2.MRIの短所

  1)撮影時間が長い

  2)空間分解能が悪い

  3)石灰化物、気体からは信号が得られない

  4)磁性体によりアーチファクトが生ずる

  5)閉所恐怖症の患者にはできない

  6)高価格の装置である

 

 3.MRIの禁忌

  1)心ペースメーカー装着者

  2)脳動脈瘤のクリッピングが施行された者

  3)眼球、内耳に磁性体が装着されている者

  4)体内に弾丸などの金属異物がある者

[3]MRIの重要用語

●スピンエコー法(SE法)

一般的に最も広く用いられているMRI撮像法で、繰り返し時間(TR)およびエコー時間(TE)の条件設定によりT1強調やT2強調の画像が得られる。

●繰り返し時間(TR

MRI画像を構成するためには条件を変えて何回も信号を発生させなければならない。
その信号を発生させるための高周波と次の高周波との間隔のことである。

●エコー時間(TE

信号発生から実際に信号を受信する時点までの間隔のことである。
TRとともに画像コントラストと密接に関係している撮像パラメーターである。

●T1強調像

解剖学的構造の描出に優れており、TR200?600msecTE10?30msecで得られる。

●T2強調像

組織の質的診断に優れておりTR1800?3000msecTE80?120msecで得られる。

GdDTPA

MRI用造影剤であり、一般的にT1強調像で用いられ画像コントラストが増強される。

●高信号と低信号

MRIの読影は、従来のX線画像のようにX線吸収差による濃淡(density)ではなく、信号強度により表現する。
信号の強いことを高信号(high signal intensity)ー画像上では白く描出されるー、信号の弱いことを低信号(low signal intensity)ー画像上では黒く描出されるー、と表現する。

[4]MRIの読影

 読影にあったては解剖を熟知していなければならないのは言うまでもないが、まずそれが何の強調像であるかを確認し、その画像での代表的な組織・物質・病態の信号強度を知っておく必要がある。

 

画像

信号強度

代表的な組織・物質・病態

T1強調像

高(白)

脂肪、高タンパク液、亜急性出血

 

低(黒)

脳脊髄液、皮質骨、水、空気、腫瘍、炎症、石灰化、線維化

T2強調像

高(白)

脂肪、脳脊髄液、水、腫瘍、炎症

 

低(黒)

皮質骨、空気、ヘモジデリン、鉄沈着、石灰化、線維化

 

 MRIの信号強度は組織中の水分含有量に大きく影響され、水分が多いほどT1強調像にて低信号、T2強調像にて高信号となる。
また一般的に水分子が動きやすいほどT1強調像にて低信号、T2強調像にて高信号となり、その動きが制限されるほどT1強調像で高信号、T2強調像で低信号となる。
漿液は粘液に比べT1強調像にて低信号、T2強調像にて高信号になる。組織によって水分子の状態が異なるため、その信号強度も異なってくる。

[5]特殊撮影法

  〔1〕脂肪抑制画像  fat suppression

  〔2MR angiography (MRA)

はじめに

 近年のMR技術の進歩は目覚ましいものがあり、新技術によって得られる情報はさらに多様化し、臨床面での応用範囲も拡大しつつある。MRの最大の特徴は、撮影時に頭位を変えることなく、任意の断層面を選択し多方向からの情報が得られることであるが、ここでは、MR特有の画像について解説すると共に、MRの特殊撮影法として顎口腔領域でも応用可能な脂肪抑制画像とMR angiographyを紹介してみたい。 

1〕脂肪抑制画像  fat suppression

 通常、T1強調画像では脂肪組織は高信号に描出され、画像上で白く見える。ところが造影等にて病変が高信号を示した場合、その高信号部位が真の病変か脂肪かの判断に苦慮することがある。このような時、脂肪抑制をかけることにより脂肪組織は低信号に描出されるため、高信号を示す病変部との鑑別に参考となる。従って、顎口腔領域においては脂肪組織内に病変が存在する場合、すなわち顎骨内(骨髄)の病変、軟組織の嚢胞や腫瘍、リンパ節の評価等に用いられている。

頻用される撮像方法としてSTIR法があり、反転時間(TI)を短く設定することで、本来高信号を示すべき脂肪組織を低信号域に描出する。

1.STIR(short inversion time inversion recovery)法 

TR/TI/TE, 2200-2500/200/22

 inversion timeを短く設定することにより、正常構造が低信号となり、病変部を良く描出することができる。口腔外科的には、頚部リンパ節の評価に有用。脂肪組織を低信号域に、筋肉を比較的低信号域に描出し、病変のみを高信号域として描出するので、頚部リンパ節の腫脹の診断に有用となる。

 スピンエコー法のT1強調画像では、リンパ節と筋肉とのコントラストがつきにくく、T2強調画像では脂肪とリンパ節の信号強度が類似しており、境界が不明瞭になる。Gd-DTPA T1強調画像ではリンパ節が増強効果を呈して、かえって周辺の脂肪組織と区別しにくくなる。

 T2強調画像のRARE(rapid acquisition with relaxation enhancement)法には、通常のSE法に比べ、脂肪の信号が高い特徴がある。このため従来のT1強調画像のみならず、RARE法でも脂肪抑制法が必要となる場合があり、一つの方法としてSTIR法が応用されている。STIR法のS/Nは低い。

2.Dixon

3.Presaturation pulse法、chemical shift selective (CHESS) sequence

4.Binomial pulse

全て化学シフト法の一つ(gradient echo法も)

2MR angiography (MRA)

 MR angiography (以下、MRA)とは、従来の血管造影法(angiography)とは違った、カテーテルも造影剤も使わないMRによる血管造影法で、非侵襲的な新しい検査手段として評価されている。

 MRAでは血管断層像を重ね合わせ、血管を軸位断ではなく通常の血管造影angiographyのように投影画像として描出するため、三次元的な血管の走行が把握できる。

 この場合、臓器や組織の情報は不要なため、血流の情報だけを取り出すような工夫をして撮像する。このために、現在主にTime of flight法とPhase contrast法という2つの方法が用いられている。それぞれの信号の採取方法には、さらに2D3Dの2つの方法があり描出される血流部も異なってくる。

1.Time of flight(TOF) MRA

 gradient echo 法では、TRTEを短く設定することができるが、この時血流を高信号として観察することができる。この血流の高信号化を応用した方法がTOF法である。

 1) 2D-TOF

  静脈系の比較的遅い血流でも描出可能。目的とする病変の広がりに適した画像が得られる。言い換えれば、他の手法では困難な広範囲のMRA像が得られる。広範囲の血管性病変の描出に有用である。S/Nは低く、細い血管や小さな血管性病変の描出に劣る。頭部では表在静脈や静脈洞の描出に優れ、頚部では頚動脈分岐部の描出が適している。      

 2) 3D-TOF

  早い血流の描出に優れる。スライス方向の空間分解能とS/Nの点において優れている。従って、細い血管や小さな血管性病変の描出に適している。目的とする病変が大きいと、病変全体が描出されない。また、撮像時間が長いため、体動の影響を受けやすく、呼吸や心拍動が加わる部位での撮像は困難である。頭部では動脈の描出に優れ、特に小さな血管性病変の描出に有用である。頚部では頚動脈分岐部の描出が可能である。       

2.Phase contrast(PC) MRA

 bipoiar flow encode gradient と呼ばれる血流信号のみを認識するための一対の傾斜磁場を用い、血流のみの画像を作る方法である。血流の速度と方向を推定でき、既知の血管性病変に対して、さらに血流情報を知りたいときの有用な検査法といえる。

 1) 2D-PC

  見たい血流速度を持つ血流を強調して観察できる。TOF法では描出困難な遅い血流も、流速設定を変えることで描出できる。形態診断に留まらず、血流動態観察という機能診断をも可能にする優れた手法といえる。

 2) 3D-PC

  2D法程血流情報を引き出すことはできない。しかし、広範囲の血流描出や、複雑な血管走行の描出に優れており、鮮明な血流画像を得られることから、主に頭部での形態診断に利用される。ただ、撮像時間が長いため使用される頻度は多くない。 

3.Subtraction MRA

 短時間で撮像できるTOF法が利用されるようになってからは、あまり使用されない。

 

 

特徴

適応

2D-TOF

広範囲の血管性病変の描出に有用である。 細い血管の描出に劣る。

頚部では頚動脈分岐部の描出

3D-TOF

早い血流の描出に優れる。        撮像時間が長い。

細い血管や小さな血管性病変の描出(主に頭部)

2D-PC

流速設定を変えて任意の血流を描出できる。            血流の速度と方向を推定できる。

適応範囲は広く、循環器領域での使用も可能

3D-PC

鮮明な血流画像を得られる。       撮像時間が長い。

小血管の描出(主に頭部)

 頚動脈分岐部を中心とした頚部の検査には、短時間で広範囲を描出できる2D-TOF法あるいは冠状断の3D-PC法が有効である。

 腫瘤性病変にこの方法を応用すれば、画像の合成を行うことにより腫瘤自体と血管が同一画像に描出され、より診断的価値が高いと考えられる。しかし、現時点でのMRAは血管造影法に比べ血管の選択性に乏しく、頻用される2D-TOF法では細い血管や小さな血管性病変の描出に劣る。よって、顎口腔領域における応用はスクリーニング的なものに過ぎないが、非侵襲的である意義は大きく、今後は血管造影法を部分的に凌駕することも可能かもしれない。

[6]歯科用金属によるアーチファクト MRI Artifact by Dental Metals

 

はじめに

 MRIには、その撮像方法の複雑さゆえに、画像上ではいろいろな偽像、いわゆるアーチファクトが発現する。われわれが日常使用する歯科用金属によっても、画像上に陰影欠損や歪などのアーチファクトが発現することがある。

 

1.アーチファクト

 1)  phase  direction(位相方向)

  motion  artifact

    flow  artifact

 2)  frequency  direction(周波数方向)

    susceptibility  artifact

   chemical  shift  artifact

 

 アーチファクトは、位相方向に発現するものと、周波数方向に発現するものがあり、周波数方向に発現するものの中に、Susceptibility  artifactがある。Susceptibility  artifactは局所磁場の不均一によるアーチファクトで、磁性体金属、磁石、古い出血、真菌塊などによって発現する。  

 磁性体金属自体は磁力を有さないが、磁場の中では磁石となり、周辺に磁場を作り、局所磁場の不均一をおこす。それにより発現するアーチファクトがSusceptibility  artifactで、周波数方向に発現し、その大きさは、磁性体注1)が一つの場合、磁場の強さと磁性体の磁化率注2)に比例する。また、T2強調画像は、T1強調画像より局所磁場の影響を受けるため、Susceptibility  artifactはT1強調画像より大きくなる。

 

1)主な磁性体には反磁性体(紙・生体など)、常磁性体(一部の金属)と強磁性体(鉄・ニッケル・ステンレスの一部など)がある。

2)磁場の中に鉄片を置くと、鉄片は磁化され、それ自身が一時的な磁石となり、周辺に磁場をつくる。この磁化されやすさ(磁石の強さ)を磁化率と呼ぶ。鉄など強磁性体以外でも、常磁性体・イオン(Cu,n,d)で鉄の1万分の1程度、反磁性物質(有機化合物・生体)でも百万分の1程度の磁化が起きる。

 

2.歯科用金属によるアーチファクト

 歯科用金属によるアーチファクトについては、Au,Ag,Au-Ag-Pd,AmではMRIに対する影響は認められず、Fe,Ni,Cr,Co,Mo,Wなどの元素を含むサニリューム、コバルタム、ニューサンプラチナ技工所用板、サンコバルトパラタルバー用線、3M乳歯冠、A-Oプレートなどにアーチファクトが発現する。

 磁性アタッチメント・キーパーは、歯科用金属と同様にそれ自体は磁力を有さないが、強磁性体金属であるためアーチファクトが発現する。


各論

[1]炎症性疾患 Inflammatory  diseases

上顎洞炎 MRI of sinusitis maxillaries

 

はじめに

 上顎洞炎の診断は、症例の経過ならびに単純X線写真、断層X線写真などにより比較的容易であり、さらにCTを用いれば骨壁の破壊や炎症の波及範囲が判明する。しかし、治療方針や手術法の選択、さらに経過を観察する上で重要である洞粘膜肥厚の程度や貯留液の状態を把握するには、軟組織のコントラスト分解能に優れるMRIが有利である。また腫瘍性疾患と炎症性疾患を信号強度の差から鑑別も可能である。

 

1.正常上顎洞の信号強度

 正常上顎洞は含気腔であるため無信号で真っ黒く描出される。T1・T2強調像で洞前壁および後壁の周囲に高信号を呈する部分があるが、これは脂肪である。洞粘膜はT1強調像では低信号、T2強調像では中等度から高信号の細い線として描出されることもあるが、正常洞粘膜は非常に薄いため描出されないことが多い。骨壁に関しては皮質骨が無信号のため詳細な評価は困難である。

 

2.診断のポイント

 炎症性疾患はほとんどの場合T2強調像で高信号、T1強調像で低信号を呈する。上顎洞炎も同様であり、これは洞内貯留液の存在、洞粘膜の浮腫や腫脹などにより、病巣内の含水量が増加したためである。
1・T2強調像にて洞内の病変が、粘膜肥厚なのか貯留液なのか判別に苦慮する場合、 Gd-DTPA造影T1強調像が有効である。Gd-DTPA造影によって肥厚粘膜は、洞内を縁取るように周辺の脂肪と同等かそれ以上に増強される。

 上顎洞内貯留液の信号強度は、その蛋白質の濃度、含水量、粘稠度によりさまざまに変化する。炎症の波及により自然孔(上顎洞孔)が狭窄閉塞し、それに伴い蛋白成分の増加と水分の吸収が起こり、粘稠度が上昇すると信号強度に変化が生じてくる。低蛋白濃度では、T1強調像で低信号、T2強調像で高信号を呈する。閉塞後時間の経過とともに蛋白濃度の上昇および含水量が低下することで、T1強調像で低信号を示していた貯留液は信号強度の増加があり、T2強調像は中等度ないし低信号を呈するようになる。さらに蛋白濃度が上昇し高蛋白の貯留液になるとT1、T2強調像ともに低信号を示すようになる。

 一般的に炎症性疾患は前述のごとく、T2強調像において高信号を示すため、中等度の信号強度(高信号の脂肪組織と低信号の筋肉との中間的信号強度)を示す腫瘍性病変との鑑別および腫瘍性病変との合併の診断にMRIは有用であるとされている。しかし、炎症性疾患でもアスペルギルスに代表される真菌症は、T2強調像で低信号を示すことがある(これは病変に含まれる常磁性体によるためと高濃度蛋白によるものと考えられている)。その他にもT2強調像にて低信号を示し、腫瘍との鑑別が必要となる場合があるので注意が必要である。

2]炎症性疾患 Inflammatory  diseases

顎骨骨髄炎 MRI of osteomyelitis


はじめに

 従来より、顎骨骨髄炎の画像診断は単純X線写真、CT、アイソトープなどの検査が行われてきたが、骨髄の描出に限界があった。MRIは骨髄の軽微な変化や病変の拡がり、さらに周囲軟組織の状態を把握することが可能である。 

 ここでは炎症性疾患のうち顎骨骨髄炎のMRIについて解説する。


1.
正常顎骨の信号強度

 生下時には全身の骨髄はすべて赤色骨髄であるが、加齢とともに脂肪髄化が進行する。骨髄の信号強度に関係する因子は、造血細胞、脂肪細胞、血液および細胞外液、貯蔵鉄、骨梁など多岐におよぶが、一般的に赤色骨髄はT1強調像にて脂肪と筋肉の中間に相当する中等度の信号強度を示す。成人の顎骨骨髄はほとんどが脂肪髄であるため、他の脂肪組織と同様にT1強調像で高信号、T2強調像で筋肉よりも高く水よりも低い信号強度を呈する。皮質骨および歯牙(歯髄を除く)は含水量が低いためT1・T2強調像ともに無信号で真っ黒く描出される。


2.
診断のポイント

 顎骨骨髄炎に対するMRIは、任意に多方向の断層像が得られる、骨髄の変化を把握しやすい、周囲軟組織への病変の進展が明瞭であるなどの利点があるが、皮質骨における微細な変化や、腐骨など石灰化病変は単純X線写真やCTのほうが優れている。そのため、診断のポイントは主に骨髄における変化および病変の範囲の把握である。またMRIはその鋭敏さから、X線写真では明らかでない骨髄病変も描出されるが、感染部分とそれに伴う浮腫が混在し、実際の病変の範囲より大きく描出されるため注意が必要である。

 急性顎骨骨髄炎は、炎症性滲出液や浮腫とともにみられる病巣内の含水量の増加と、脂肪細胞の減少によりT1強調像で低信号、T2強調像で高信号を呈し、Gd-DTPA造影T1強調像では拡張した毛細血管を反映して増強効果が認められる。T1強調像では正常骨髄の信号強度が低下し病変部の範囲が明瞭であるのに対し、T2強調像では正常骨髄と信号強度が同様となり、病変部の判定ができないこともあるので注意を要する。一方、慢性顎骨骨髄炎は、病変部での線維化、骨硬化による含水量の低下などにより、T2強調像にて信号強度の低下が認められるようになり、Gd-DTPA造影T1強調像においても病変部の増強効果の低下が認められる。

[3]嚢胞性疾患 MRI of cyst

 

はじめに

 一般的に歯科口腔外科領域の嚢胞といえば、歯根嚢胞や濾胞性歯嚢胞に代表されるように、顎骨内に存在しているものが多い。しかしながら、顎骨内より皮質骨を吸収し顎骨外(顎骨周囲の軟組織や上顎洞)に増大している嚢胞や、軟組織に発生する嚢胞に遭遇することも少なくない。

 ここではそれらの症例をとおして、嚢胞のMRIについて解説する。

 

診断のポイント

 X線診断ではCTも含めて、画像上のコントラストを決定する因子はX線透過度のみであるが、MRIでは多数の因子が関与しており、このことが嚢胞の位置、範囲、性状を把握するてがかりとなる。つまり組織側の因子である緩和時間、プロトン密度等に対し撮像側の因子である繰り返し時間(TR)、エコ?時間(TE)等を変化させることにより周囲正常組織(筋肉、脂肪、血管等)と嚢胞とのコントラストを変化させ、その位置、範囲、性状を把握することができる。特に軟組織に発生した嚢胞では、コントラスト分解能に優れるため周囲正常組織と病変部(嚢胞)の区別に有効である。

 

 

T1強調像

T2強調像

T1強調Gd-DTPA

嚢胞

低信号

高信号

低信号

筋肉

低?中信号

低?中信号

低?中信号

脂肪

高信号

高信号

高信号

血管

無信号

無信号

無信号

皮質骨

無信号

無信号

無信号

骨髄

高信号

高信号

高信号

 

 一般的に嚢胞壁はT1、T2強調像で低信号を示すとされているが、その発生位置、厚さ、組織型により一定ではない。

また嚢胞内容液の信号強度は、その蛋白質の濃度、含水量、粘稠度によりさまざまに変化する。漿液性の場合は含水量の増加にともないT1強調像で低信号、T2強調像で高信号を示すが、粘稠度が上昇すると含水量が低下し信号強度に変化が生じてくる。

 

内容液

T1強調像

T2強調像

1強調Gd-DTPA

漿液性

低?中信号

高信号

低?中信号

粘液性

高信号

高信号

高信号

固形性

低信号

低信号

低信号

 

 嚢胞は前述のごとく、T1強調像では嚢胞内容液の性状により信号強度は一定しないが、T2強調像においてはほとんどの場合高信号を示すため、腫瘍性病変の様に中等度の信号強度(高信号の脂肪組織と低信号の筋肉との中間的信号強度)を示すものとの鑑別および、腫瘍性病変との合併の診断にMRIは有用であるとされている。また、軟組織に発生した嚢胞では、嚢胞壁が薄い場合には画像上に描出されずにT2強調像にて低信号を示し、腫瘍性病変との鑑別が必要となる場合があるので注意が必要である。なお、嚢胞では造影効果がなく、Gd-DTPA造影T1強調像は有効でない。このことも腫瘍性病変との鑑別に役に立つ。

下顎骨内に生じた嚢胞

顎下部の皮下軟組織内にできた嚢胞

[4]良性腫瘍 MRI of benign tumor

はじめに

 日常臨床の中ではさまざまな腫瘍性病変に遭遇する。それらは、歯原性、非歯原性であったり、また軟・硬組織に発生しその種類は多岐多様にわたる。ここでは、良性腫瘍のうち比較的臨床で遭遇する機会の多いものを中心に代表症例を供覧し解説する。

 

1.診断のポイント

まず診断のうえで鑑別が必要とされるものとして悪性腫瘍、嚢胞性疾患があげられる。MRIにおいて悪性との鑑別は主として辺縁と内部の信号強度の均一性、周囲組織への浸潤の有無によってなされる。また嚢胞との鑑別は内容物の造影効果の有無が大きな鑑別のポイントになる。

MRIはコントラスト分解能が高いために腫瘍と正常組織の境界を明瞭にし病変進展範囲を正確に示す。頭頚部領域の腫瘍性病変の診断にはT1T2強調画像の両者が必須であり、特に造影剤を投与したT1強調画像で腫瘍と正常組織との境界が明瞭となる。

 

2.硬組織に発生する良性腫瘍

 硬組織(主に顎骨)に発生する良性腫瘍の代表的なものにエナメル上皮腫がある。エナメル上皮腫は下顎に好発する歯原性腫瘍であり嚢胞形成を伴うことが多い。そのため充実性部分と、多発性嚢胞成分が混在している場合が多くMRIT2強調像での嚢胞成分を反映した高信号域の存在と腫瘤の局在が特徴的である。



3.軟組織に発生する良性腫瘍

 頭頚部軟組織に発生する良性腫瘍としては血管腫、リンパ管腫、脂肪腫などが代表的のものとしてあげられる。そのうち血管腫、リンパ管腫はT2強調像、STIR法にて著明な高信号を呈し、ガドリニウム造影にて、リンパ管腫は血管腫よりも造影効果は弱いとされている。また血管腫は静脈石を伴うことが多く、単純CTも両者の鑑別に有用である。

 脂肪腫はT1強調像、T2強調像ともに脂肪組織と同様な高信号を呈し、STIR法にて低信号となる。

 頭頚部に発生する腫瘍性病変で稀なものに神経鞘腫がある。通常神経鞘腫はMRIT1強調像で低信号から中間信号であり、T2強調像では高信号である。嚢胞性の部分はT2強調像で高信号を示す。

 
次に唾液腺腫瘍であるが、その鑑別はMRIによっても唾液腺内に限局した腫瘍の診断は容易ではない。一般に多発し造影MRIで造影効果がない場合はWartin腫瘍を、単発で被膜構造を有し増強効果が強くT2強調像で高信号の成分が多いものは良性多形性腺腫を考える。

 

[5]悪性腫瘍 MRI of malignant tumor

 

はじめに

 頭頚部癌は全癌の9%を占めると言われいる。癌センターなど特殊な病院を除いて、大学病院や基幹病院においても比較的少ない疾患であり、一般開業医で遭遇する機会はさらに少ない。しかし、この疾患に対する誤った診断は生命に大いなる危険をもたらすため、その診断には的確かつ迅速さが要求される。ここでは、頭頚部領域悪性腫瘍の例を供覧しMRIによる悪性腫瘍の診断について解説する。

 

診断のポイント

 MRIはコントラスト分解能に優れているため、腫瘍と正常組織の境界を明瞭にし病変の進展範囲を正確に示す。頭頚部領域の悪性腫瘍の診断にはT1T2強調画像、また造影T1強調画像が有用で、これらを用いる事により病変の発見、良性疾患との鑑別が可能となる。これらの疾患との鑑別は主として信号強度の均一性、周囲組織への浸潤の有無によってなされる。

 一般的には、悪性腫瘍の場合、病巣内の信号強度は不均一で、境界が不明瞭な像として描出される。T1強調画像では脂肪より低信号で筋肉より僅かに高信号、T2強調画像では不均一な高信号、造影T1強調画像では不均一で、かつ軽度?中程度の造影効果がある。ただし、小さな腫瘍は造影剤により、その辺縁が明瞭になる。

[6]顎関節症 MRI of TMJ

はじめに

 MRIは、生体軟部組織の再現性に優れ、任意の方向で撮影が可能であるため、種々の顎関節症の診断に対して有用性が高い。ここでは顎関節症のMRI診断について、特に関節円板の転位、形態異常、および骨変化がどのように描出されるか解説する。

 

診断のポイント

 正常顎関節のMRIにおいて、下顎頭および関節結節の骨髄は高信号で白く、皮質骨は無信号で黒く描出される。両皮質骨の間に中等度の信号強度領域が存在し、その中に低信号を示す関節円板がbiconcaveな形態として認められる。関節円板は前方肥厚部、中間狭窄部、後方肥厚部に識別でき、その後方に関節円板後部組織が連続して見られる。円板後部組織の信号強度は脂肪や血液成分が多いため関節円板より高信号であり、両者を区別できる。関節円板の前方には中等度の信号強度を示す外側翼突筋が認められる。

 顎関節症の診断については、矢状断、前頭断撮影により関節円板の転位を識別することができる。関節円板の前方転位では矢状断撮影にて低信号を呈する関節円板が下顎頭の前方に認められる。そして開閉口の状態を撮影することにより関節円板の復位の有無を調べることができる。側方転位では前頭断撮影にて関節円板が下顎頭内側極あるいは外側極へ転位する像を呈する。

 また関節円板の変形の有無も識別できる。

 下顎頭の変形などの骨変化や退行性病変においても矢状断、前頭断撮影にて観察できる。下顎頭骨髄は一般的に高信号を示すが、虚血性骨頭壊死を伴う場合は信号強度の低下を認める。

 まだ診断学的意義は確立していないが、T2強調像にて関節内浸出液と考えられる高信号像が上下関節腔の部位に一致して見られることがある。これは生理的な滑液とも考えられる反面、関節円板の前方転位を伴うクロ?ズドロック症例に頻繁に見られることから、炎症性滲出液とも考えられ今日注目されている。 

 

おわりに

 MRIは顎関節症の診断に対して有用性が高いが、関節円板の癒着および穿孔の有無を調べるには顎関節腔造影検査が、また骨変化についてはCTを加えた方がより高い診断精度が得られるため、これらの画像診断と合わせて顎関節症の診断を行うことがより効果的である。

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