関節リウマチ
関節リウマチは、主に手足の関節に炎症が起こり、放っておくと関節が壊れていく病気です。 早期から適切な治療を行うことで、関節の破壊や日常生活への影響を大きく減らすことができます。
1. 疾患概念(どんな病気か)
関節リウマチは、体の免疫のしくみが自分の関節を誤って攻撃してしまう「自己免疫疾患」の一つです。 主に手首や指、足の指などの小さな関節に、左右対称に炎症(はれ・痛み)が起こるのが特徴です。 炎症が長く続くと、軟骨や骨が少しずつ傷み、関節が変形して動かしにくくなります。 関節だけでなく、肺や血管など全身にも影響が出ることがあります。
2. 疫学的知見(どのくらいの人がかかるか)
関節リウマチは、成人の約1%弱がかかる比較的よくみられる病気です。 男性よりも女性に多く、患者さんのおよそ3〜4人に1人が男性、残りが女性とされています。 発症しやすい年齢は30〜60歳代ですが、それより若い方や高齢の方にも起こりえます。 遺伝的な要因に、喫煙や歯周病、ホルモンの変化など、生活環境や体質が重なって発症すると考えられています。
3. 病態生理(体の中で何が起きているか)
免疫は本来、細菌やウイルスなどの「外からの敵」を攻撃するしくみですが、 関節リウマチではこの免疫が狂い、関節の内側を覆う「滑膜(かつまく)」という薄い膜を 自分の体なのに敵と勘違いして攻撃します。 その結果、滑膜に炎症が続き、はれや痛みの原因となります。 炎症が長く続くと、炎症を起こした滑膜が増殖して軟骨や骨を溶かし、 関節の変形や動きにくさを引き起こします。 また、炎症を起こす物質(サイトカイン)が全身をめぐり、疲労感や微熱、貧血などの全身症状も生じます。
4. 症状(どんな症状が出るか)
- 手の指・手首・足の指などの関節の痛み・はれ・熱っぽさ
- 朝、起きたときに手がこわばり、30分以上動かしにくい(朝のこわばり)
- 体がだるい、疲れやすい、微熱が続く
- 関節の動かしにくさ、握力が落ちる、ボタンがかけにくいなどの日常動作のしにくさ
- 病気が進行した場合、指の変形や、肘・膝などの関節変形
これらの症状は、いくつかの関節に少しずつ出てくることもあれば、 短い期間で多くの関節に広がることもあります。 早めに治療を始めるほど、関節の破壊を防ぎやすくなります。
5. 検査(どのような検査をするか)
- 血液検査: 炎症の強さを見る検査(CRP、血沈など)や、 リウマトイド因子(RF)、抗CCP抗体(抗シトルリン化ペプチド抗体)など、 関節リウマチに特徴的な自己抗体を調べます。
- 画像検査: 関節のレントゲン写真で骨の破壊や変形の有無を確認します。 超音波(エコー)検査やMRIを用いて、早期の炎症や小さな関節の変化を詳しく評価することもあります。
- 身体診察: 関節のはれ、痛み、熱感、可動域などを丁寧に診察し、 どの関節がどの程度障害されているかを評価します。
これらの検査結果と症状を総合して、病気の活動性(今どれくらい炎症が強いか)や進行の程度を評価し、 治療方針を決めていきます。
6. 診断(どのように診断するか)
関節リウマチの診断は、症状、診察所見、血液検査、画像検査の結果を組み合わせて行います。 手足の小さな関節に左右対称に炎症があること、朝のこわばりが続くこと、 リウマトイド因子や抗CCP抗体が陽性であることなどが診断の手がかりになります。 国際的な分類基準(ACR/EULAR分類基準)も参考にしますが、 最終的な診断はリウマチ専門医が総合的に判断します。 似た症状を示す他の病気(変形性関節症、痛風、感染性関節炎など)を見分けることも重要です。
7. 主な合併症(起こりうる別の病気・障害)
- 関節の破壊や変形による歩行障害・手指の機能低下
- 骨粗しょう症(骨がもろくなり、骨折しやすくなる)
- 間質性肺炎などの肺の病気
- 動脈硬化の進行による心筋梗塞や脳卒中のリスク増加
- 長期のステロイド使用による糖尿病・高血圧・感染症などの副作用
- 免疫を抑える薬(免疫抑制薬・生物学的製剤など)に伴う感染症のリスク増加
これらの合併症を早期に見つけて対策するため、定期的な血液検査・画像検査・骨密度検査などが大切です。 必要に応じて、呼吸器内科や循環器内科など他科と連携して診療を行います。
8. 治療(どのように治す・抑えるか)
- 抗リウマチ薬(DMARDs): メトトレキサートなど、病気の進行そのものを抑える薬が治療の中心です。 効果が出るまでに数週間〜数か月かかりますが、早期から使うことで関節破壊を防ぎやすくなります。
- 生物学的製剤・JAK阻害薬: 炎症に関わる特定の物質をピンポイントで抑える、より新しいタイプの薬です。 通常の抗リウマチ薬で十分な効果が得られない場合に検討します。
- 消炎鎮痛薬(NSAIDs): 痛みやはれを抑えるための薬で、症状のつらさを和らげる目的で使用しますが、 病気の進行を止める薬ではありません。
- ステロイド: 強い炎症を短期間で抑えたいときに用います。 長期大量使用は副作用が多いため、できるだけ少ない量・短い期間に抑えるよう工夫します。
- リハビリテーション・運動療法: 関節を守りながら動かす訓練や、筋力を維持する運動を行うことで、 関節機能を保ち、日常生活の質を保つことができます。
- 手術療法: 進行した関節破壊や変形に対して、人工関節置換術などの手術を行うことがあります。
最近の治療は「できるだけ早く炎症をしっかり抑えて、関節の破壊を防ぎ、 普段と変わらない生活を送れる状態(寛解)」を目指す方針が主流です。 定期的に診察・検査を行いながら、患者さん一人ひとりに合った治療の組み合わせを選んでいきます。
9. 予後(今後の見通し)
昔は関節リウマチと診断されると関節の変形が進み、日常生活に大きな支障が出ることも少なくありませんでした。 しかし現在は、早期診断と強力な治療薬の進歩により、多くの患者さんが 仕事や家事を続けながら生活できるようになっています。
一方で、治療を中断したり自己判断で薬を減らしたりすると、炎症がぶり返して関節が再び傷むことがあります。 長期的な予後(病気の経過)を良くするためには、 定期通院と検査、主治医との相談に基づいた治療の継続が大切です。