オーバーラップ症候群

オーバーラップ症候群は、2つ以上の膠原病(例:SLEと皮膚筋炎、強皮症と多発性筋炎など)が 同じ患者さんに重なって現れる状態を指します。

1. 疾患概念(どんな病気か)

一つの膠原病の診断基準だけでは説明しきれない場合に、 「オーバーラップ症候群」として扱います。 たとえば、SLEの特徴的な皮疹や自己抗体と、皮膚筋炎の筋炎所見が同時に見られる場合などです。

2. 疫学的知見(どのくらいの人がかかるか)

各膠原病の患者さんの中で、一部の方にオーバーラップが見られます。 正確な頻度は病型により異なりますが、決して珍しくありません。

3. 病態生理(体の中で何が起きているか)

免疫の異常が複数の標的臓器や組織に向かうことで、 それぞれの膠原病に特有の炎症が同時に起こります。 自己抗体も複数種類が検出されることが多く、病像が複雑になります。

4. 症状(どんな症状が出るか)

症状は組み合わさる病気の種類によって異なります。 例として、以下のような症状が組み合わさることがあります。

  • SLEの皮疹や関節炎+皮膚筋炎の筋力低下
  • 強皮症の皮膚硬化+多発性筋炎の筋炎症状
  • 関節リウマチの関節炎+シェーグレン症候群の乾燥症状 など

5. 検査(どのような検査をするか)

  • 血液検査:それぞれの膠原病に特有な自己抗体(抗ds-DNA、抗Sm、抗Jo-1など)を検索します。
  • 画像検査・臓器機能検査:肺、心臓、腎臓、筋肉などの障害の有無を確認します。
  • 組織検査:皮膚や筋肉、生検などで病変の性質を確認することがあります。

どの臓器がどの程度障害されているかを丁寧に評価することが重要です。

6. 診断(どのように診断するか)

個々の膠原病の分類基準や特徴的な所見をもとに、 「どの膠原病の特徴がどの程度重なっているか」をリウマチ専門医が総合判断します。 明確な基準がない場合も多く、経験に基づく評価が重要です。

7. 主な合併症(起こりうる別の病気・障害)

合併症は、重なっているそれぞれの膠原病に特徴的なものが組み合わさります。 例として、間質性肺炎、肺高血圧症、腎炎、心筋炎、血栓症などが挙げられます。

8. 治療(どのように治す・抑えるか)

  • 病勢の強い臓器障害(腎炎、間質性肺炎、心筋炎など)を優先して治療します。
  • ステロイド薬を中心に、必要に応じて免疫抑制薬や生物学的製剤を組み合わせます。
  • 臓器ごとの専門科(呼吸器内科、腎臓内科、循環器内科など)と連携して治療を行います。

9. 予後(今後の見通し)

予後は、どの膠原病がどの程度重なっているか、どの臓器が障害されているかによって大きく異なります。 早期から専門的な治療とフォローアップを行うことで、合併症を抑えながら生活を続けられる可能性が高まります。