乾癬性関節炎
乾癬性関節炎は、皮膚の病気である乾癬に関節炎が合併する病気で、 関節の痛み・腫れや腱付着部の痛み、背骨の炎症などが見られます。
1. 疾患概念(どんな病気か)
乾癬性関節炎は、免疫の異常によって皮膚と関節の両方に炎症が起こる病気です。 手足の指、脊椎、仙腸関節(骨盤の関節)など、さまざまな部位の関節炎を来します。
2. 疫学的知見(どのくらいの人がかかるか)
乾癬患者さんのうち、約1〜3割で関節炎が生じるとされています。 男女差は比較的小さく、若年〜中高年まで幅広い年齢でみられます。
3. 病態生理(体の中で何が起きているか)
免疫細胞が皮膚と関節の組織を攻撃し、炎症を引き起こします。 特に腱や靭帯が骨に付着する部分(腱付着部)で炎症が起こりやすく、 これが痛みや骨破壊の原因となります。
4. 症状(どんな症状が出るか)
- 手足の関節の痛み・はれ
- 指全体が腫れ、「ソーセージ様指」に見える
- かかとや足底、肘などの腱付着部の痛み
- 腰痛・おしりの奥の痛み(仙腸関節炎)
- 皮膚の赤い発疹とフケのような鱗屑(乾癬)、爪の変形
5. 検査(どのような検査をするか)
- 血液検査:炎症反応(CRP、血沈)などを確認します。
- 画像検査:レントゲンやMRI、超音波で関節や腱付着部の炎症・骨の変化を調べます。
- 皮膚所見:皮膚科と連携し、乾癬の診断・重症度評価を行います。
6. 診断(どのように診断するか)
乾癬(または家族歴)と、特徴的な関節炎や腱付着部炎、画像所見を組み合わせて診断します。 関節リウマチや痛風など、他の関節炎との区別も重要です。
7. 主な合併症(起こりうる別の病気・障害)
- 関節破壊・変形による機能障害
- ぶどう膜炎(目の炎症)
- メタボリックシンドローム、動脈硬化のリスク増加
8. 治療(どのように治す・抑えるか)
- NSAIDsで痛みや炎症を和らげます。
- メトトレキサートなどの抗リウマチ薬(DMARDs)を使用します。
- 生物学的製剤(抗TNF薬、抗IL-17薬、抗IL-23薬など)で、皮膚と関節の炎症を強力に抑えます。
- リハビリテーションで関節機能の維持・改善を図ります。
9. 予後(今後の見通し)
適切な治療により、関節の破壊や日常生活への影響を大きく減らすことが可能です。 皮膚科との連携のもと、皮膚と関節の両方を長期的にコントロールしていくことが重要です。