強直性脊椎炎
強直性脊椎炎は、背骨や骨盤の関節に炎症が起こり、 長期的には背骨が硬くなってしまう可能性のある炎症性脊椎関節炎です。
1. 疾患概念(どんな病気か)
主に若年〜中年で発症し、慢性的な腰痛や背部痛、朝のこわばりを特徴とする病気です。 時間とともに背骨が「竹の棒」のように硬くなることがあります。
2. 疫学的知見(どのくらいの人がかかるか)
欧米では比較的多い病気ですが、日本ではやや少ないとされています。 HLA-B27という遺伝子を持つ人に多く、男性に多い傾向があります。
3. 病態生理(体の中で何が起きているか)
免疫反応が脊椎や仙腸関節の靭帯・骨の付着部に向かい、 炎症と新しい骨形成が繰り返されることで、関節が徐々に硬くなります。
4. 症状(どんな症状が出るか)
- 若いころから続く慢性的な腰痛・背部痛
- 朝のこわばり、動き始めがつらい
- 運動するとむしろ楽になる腰痛
- おしりの奥の痛み(仙腸関節炎)
- 胸を大きく膨らませにくくなる(胸郭の可動性低下)
5. 検査(どのような検査をするか)
- レントゲン:仙腸関節や脊椎の骨変化(骨の橋渡し)を評価します。
- MRI:早期の炎症所見を捉えるのに有効です。
- 血液検査:炎症反応やHLA-B27の有無を調べます。
6. 診断(どのように診断するか)
若年からの慢性腰痛、朝のこわばり、画像検査での仙腸関節炎・脊椎炎の所見などを組み合わせて診断します。
7. 主な合併症(起こりうる別の病気・障害)
- 脊椎の強直による姿勢変化・可動域制限
- 骨粗しょう症による脊椎骨折
- ぶどう膜炎(目の炎症)
- その他の脊椎関節炎(末梢関節炎、腱付着部炎など)
8. 治療(どのように治す・抑えるか)
- NSAIDsで痛みと炎症を抑えます。
- TNF阻害薬やIL-17阻害薬などの生物学的製剤を用いることで、炎症と症状を強力に抑えることができます。
- リハビリテーションで姿勢と背骨の柔軟性を保つことが重要です。
9. 予後(今後の見通し)
適切な治療と運動療法により、背骨の強直や姿勢の悪化をある程度抑え、 日常生活を維持できる可能性が高まります。早期診断・早期治療が鍵となります。