ベーチェット病
ベーチェット病は、口内炎・外陰部潰瘍・皮膚のぶつぶつ・目の炎症などが繰り返し起こる全身性の炎症性疾患です。
1. 疾患概念(どんな病気か)
体のあちこちの血管に炎症が起こり、口内炎、外陰部潰瘍、皮膚症状、ぶどう膜炎などが繰り返し出る病気です。 腸や血管、中枢神経などに炎症が及ぶ場合もあります。
2. 疫学的知見(どのくらいの人がかかるか)
日本や中東・地中海沿岸に多い病気で、若年〜中年の男女に発症します。 HLA-B51などの遺伝的素因と、環境要因が関係すると考えられています。
3. 病態生理(体の中で何が起きているか)
異常に活性化した免疫が、血管壁や粘膜を攻撃し、血管炎や潰瘍・発疹を起こします。 白血球の働き方の異常や、サイトカインと呼ばれる炎症物質の過剰が関与しています。
4. 症状(どんな症状が出るか)
- 繰り返す口内炎(アフタ)
- 外陰部の痛みを伴う潰瘍
- にきびのような皮疹、結節性紅斑様病変
- 目の炎症(ぶどう膜炎)による充血・視力低下
- 関節痛、関節炎
- 腸の潰瘍による腹痛・下血、血栓性静脈炎、中枢神経症状など
5. 検査(どのような検査をするか)
- 血液検査:炎症反応、免疫異常、貧血の有無など
- 眼科検査:ぶどう膜炎の有無・程度を精査
- 内視鏡検査:消化管病変(腸管ベーチェット)の確認
- 画像検査:血管病変や中枢神経病変の有無をCT/MRIなどで評価
6. 診断(どのように診断するか)
繰り返す口内炎に加え、外陰部潰瘍、皮膚症状、眼病変などがどの程度そろっているか、 それぞれの頻度と経過を総合して診断します。ベーチェット病の診断基準も参考にします。
7. 主な合併症(起こりうる別の病気・障害)
- 視力障害・失明(重症ぶどう膜炎)
- 腸管穿孔などを伴う腸管ベーチェット
- 血栓性静脈炎、大血管炎
- 中枢神経ベーチェットによる神経症状
8. 治療(どのように治す・抑えるか)
- コルヒチンやNSAIDsで口内炎・関節炎をコントロール
- ステロイド、免疫抑制薬で重症病変(眼・腸管・血管・中枢神経)を治療
- 生物学的製剤(抗TNF薬など)を用いることもあります
9. 予後(今後の見通し)
眼病変や血管・中枢神経病変が強い場合は慎重な経過観察が必要ですが、 近年の治療薬の進歩により、視力予後や全身の見通しは改善しつつあります。 継続的なフォローと早めの治療調整が重要です。