成人発症スティル病

成人発症スティル病は、高熱・発疹・関節痛を三大症状とする全身性の炎症性疾患で、 血液中の炎症物質が過剰に放出される「サイトカインストーム」が関与すると考えられています。

1. 疾患概念(どんな病気か)

子どもの若年性特発性関節炎の一型に似た病気が成人になってから発症したものと考えられています。 原因不明の高熱と、サーモンピンク色の発疹、強い関節痛・関節炎が特徴です。

2. 疫学的知見(どのくらいの人がかかるか)

まれな疾患で、若年〜中年の成人に発症します。男女差は比較的小さいとされています。 ウイルス感染などをきっかけに発症する可能性が指摘されています。

3. 病態生理(体の中で何が起きているか)

IL-1やIL-6、IL-18などのサイトカインが過剰に産生され、 高熱や発疹、関節炎、臓器障害を引き起こします。 一部ではマクロファージ活性化症候群(重い全身炎症)を合併することがあります。

4. 症状(どんな症状が出るか)

  • 39℃前後の高熱(夕方〜夜に上がり、朝に下がることが多い)
  • 熱に合わせて出たり消えたりするサーモンピンク色の皮疹
  • 強い関節痛・関節炎
  • のどの痛み、リンパ節腫脹、肝脾腫
  • 倦怠感、食欲低下

5. 検査(どのような検査をするか)

  • 血液検査:強い炎症反応、白血球増多、フェリチン高値、肝機能異常など
  • 自己抗体は通常陰性で、他の膠原病との違いの手がかりになります。
  • 画像検査:リンパ節腫脹、肝脾腫、胸水・心嚢水の有無などを確認します。
  • 感染症や悪性腫瘍を除外するための各種検査も重要です。

6. 診断(どのように診断するか)

特異的な検査はなく、高熱・発疹・関節炎などの症状と、血液検査所見を組み合わせ、 感染症・悪性腫瘍・他の膠原病を除外したうえで「総合診断」します。

7. 主な合併症(起こりうる別の病気・障害)

  • マクロファージ活性化症候群(重い多臓器不全を起こしうる状態)
  • 肝障害、心膜炎、胸膜炎
  • 慢性関節炎への移行

8. 治療(どのように治す・抑えるか)

  • 中〜高用量のステロイドで急性炎症を抑えます。
  • メトトレキサートなどの免疫調整薬を併用することがあります。
  • IL-1阻害薬、IL-6阻害薬などの生物学的製剤が有効な場合があります。

9. 予後(今後の見通し)

単発で落ち着くタイプ、再燃を繰り返すタイプ、慢性関節炎が続くタイプなど、 経過はさまざまです。早期の診断・治療により重篤な合併症を防ぐことが重要です。