大動脈炎症候群
大動脈炎症候群は、大動脈とその枝の太い血管に炎症が起こり、 血管の狭窄や拡張(こぶ)が生じる病気で、日本では高安動脈炎として知られています。
1. 疾患概念(どんな病気か)
主に若い女性に発症し、首や腕の動脈、腎動脈などの太い血管に炎症が起こることで、 脈が触れにくくなったり、血圧差や高血圧、脳・心臓・腎臓の血流障害が生じる病気です。
2. 疫学的知見(どのくらいの人がかかるか)
日本やアジアに比較的多く、若年〜中年の女性に多いとされています。 まれな疾患ですが、早期発見・治療が重要です。
3. 病態生理(体の中で何が起きているか)
免疫反応により、大動脈とその枝の血管壁に炎症が起こり、血管壁が厚くなったり狭くなったりします。 部分的にこぶ(動脈瘤)ができることもあります。
4. 症状(どんな症状が出るか)
- 発熱、倦怠感、体重減少などの全身症状(初期)
- 首や腕の脈が触れにくい・左右差がある
- 腕や首のだるさ・しびれ、めまい
- 高血圧(特に腎動脈狭窄による)
- 胸痛、呼吸困難(冠動脈や大動脈病変による)
5. 検査(どのような検査をするか)
- 血液検査:炎症反応(CRP、血沈)など
- 血圧測定:左右の上肢の血圧差を確認
- 血管エコー、CT血管造影、MRI血管撮影:大動脈やその分枝の狭窄・拡張を評価
- 心エコー:大動脈弁・心機能の評価
6. 診断(どのように診断するか)
年齢・症状・血圧差などの臨床所見と、画像検査での血管狭窄・拡張所見を組み合わせて診断します。 他の血管炎や動脈硬化性疾患との区別も行います。
7. 主な合併症(起こりうる別の病気・障害)
- 高血圧・腎機能障害
- 脳梗塞・一過性脳虚血発作
- 狭心症・心筋梗塞
- 大動脈瘤・大動脈解離
8. 治療(どのように治す・抑えるか)
- ステロイドを中心とした免疫抑制療法で血管炎の活動性を抑えます。
- アザチオプリン、メトトレキサート、生物学的製剤などを併用することがあります。
- 血管狭窄が高度な場合には、カテーテル治療やバイパス手術を検討します。
- 降圧薬による血圧管理も重要です。
9. 予後(今後の見通し)
適切な免疫抑制療法と血管治療、血圧管理により、多くの方で長期生存が可能になってきています。 ただし、再燃や新たな血管病変の出現もあり得るため、長期的なフォローが不可欠です。