巨細胞性動脈炎
巨細胞性動脈炎は、こめかみの動脈など、頭部や首の太い血管に炎症がおこる病気で、 強い頭痛や視力障害をきたすことがある高齢者の血管炎です。
1. 疾患概念(どんな病気か)
主に50歳以上に発症し、側頭動脈(こめかみの血管)や眼動脈などに炎症が起きる血管炎です。 放置すると視力低下や失明の危険があるため、早期診断・早期治療が重要です。
2. 疫学的知見(どのくらいの人がかかるか)
欧米では比較的多く、日本では少なめとされていますが、高齢化に伴い報告が増えています。 女性に多く、しばしばリウマチ性多発筋痛症(肩・腰まわりのこわばり)を合併します。
3. 病態生理(体の中で何が起きているか)
免疫細胞が、主に中〜大動脈の血管壁を攻撃し炎症を起こします。 血管の内側が腫れて血流が悪くなり、その先の組織(目・脳など)に血液が届きにくくなります。
4. 症状(どんな症状が出るか)
- 新たに出現した強い頭痛、とくにこめかみの痛み
- こめかみの血管の拍動低下や圧痛
- 食事の際、あごがだるくなる(顎跛行)
- 視力低下、視野が欠ける、一時的な視力障害
- 発熱、倦怠感、体重減少
- 肩・腰まわりのこわばり(リウマチ性多発筋痛症の症状)
5. 検査(どのような検査をするか)
- 血液検査:炎症反応(CRP、血沈)の著しい上昇
- 側頭動脈エコー:血管壁の腫れ(ハローサイン)
- 側頭動脈生検:血管壁の炎症(巨細胞など)の確認
- 全身の血管画像検査:大動脈炎の有無をCT・MRI・PETなどで評価
6. 診断(どのように診断するか)
50歳以上の新しい頭痛、視力障害、側頭動脈の所見、炎症反応上昇などと、 エコー・生検所見を組み合わせて診断します。失明防止のため、疑わしい場合は治療を優先することがあります。
7. 主な合併症(起こりうる別の病気・障害)
- 視力障害・失明
- 脳梗塞
- 大動脈瘤・大動脈解離
- リウマチ性多発筋痛症
8. 治療(どのように治す・抑えるか)
- 高用量ステロイドを速やかに開始し、視力障害の進行を防ぎます。
- その後、徐々にステロイド量を減らしつつ、再燃予防のために免疫抑制薬や生物学的製剤を併用することがあります。
- 大動脈病変がある場合は、循環器内科と連携して治療します。
9. 予後(今後の見通し)
適切な治療により多くの患者さんで病気をコントロールできますが、 早期の視力障害は回復しにくいこともあります。 再燃や大動脈病変の発生に注意しながら、長期的なフォローアップが必要です。