結節性多発動脈炎

結節性多発動脈炎は、中くらいの太さの動脈に炎症が起こり、 血管が傷つくことで多彩な臓器障害を引き起こす全身性血管炎です。

1. 疾患概念(どんな病気か)

腎臓、腸、末梢神経、皮膚などの中型動脈に炎症が起こり、 血管壁に結節状の変化や動脈瘤が生じる病気です。 臓器の血流が悪くなり、さまざまな症状が現れます。

2. 疫学的知見(どのくらいの人がかかるか)

まれな疾患で、主に中年以降に発症します。 以前はB型肝炎ウイルス感染との関連が指摘されていましたが、ワクチン普及により減少しています。

3. 病態生理(体の中で何が起きているか)

免疫反応により、動脈壁に炎症が起こり、血管が弱くなったり狭くなったりします。 その結果、臓器への血流不足や出血、梗塞が起こります。

4. 症状(どんな症状が出るか)

  • 発熱、体重減少、倦怠感
  • 筋肉痛・関節痛
  • 手足のしびれや力が入りにくい(多発単神経炎)
  • 腹痛、下血(腸の血流障害)
  • 高血圧、腎機能障害
  • 皮膚の網目状の紫斑(網状皮斑)やしこり

5. 検査(どのような検査をするか)

  • 血液検査:炎症反応、腎機能、肝機能など
  • B型肝炎ウイルス関連検査
  • 血管造影(腎動脈・腹腔動脈など):小さな動脈瘤や狭窄の確認
  • 神経や皮膚の生検:血管炎の組織学的確認

6. 診断(どのように診断するか)

症状、血液検査、血管造影所見、生検による血管炎所見などを総合して診断します。 ANCA関連血管炎など他の血管炎との鑑別も重要です。

7. 主な合併症(起こりうる別の病気・障害)

  • 腎不全、高血圧
  • 消化管穿孔・出血
  • 神経障害による歩行障害
  • 心筋梗塞、心不全(冠動脈病変)

8. 治療(どのように治す・抑えるか)

  • ステロイド大量療法で炎症を抑えます。
  • 重症例ではシクロホスファミドなどの免疫抑制薬を併用します。
  • B型肝炎関連の場合は、抗ウイルス薬との併用を検討します。

9. 予後(今後の見通し)

早期に適切な治療を行うことで、以前に比べて予後は改善していますが、 依然として重症度の高い疾患です。再発や治療の副作用にも注意しながら、専門医による長期フォローが必要です。