顕微鏡的多発血管炎
顕微鏡的多発血管炎(MPA)は、小さな血管に炎症が起こるANCA関連血管炎で、 腎臓の糸球体腎炎や肺出血を起こすことがある重篤な病気です。
1. 疾患概念(どんな病気か)
主に毛細血管や細小動静脈など、ごく細い血管に炎症が起きる血管炎です。 腎臓の糸球体や肺胞の毛細血管が障害され、腎炎や肺胞出血を来します。
2. 疫学的知見(どのくらいの人がかかるか)
高齢者に多く、日本でも比較的よくみられるANCA関連血管炎の一つです。 MPO-ANCA陽性であることが多いとされています。
3. 病態生理(体の中で何が起きているか)
MPO-ANCAなどの自己抗体が好中球を活性化し、血管壁を傷つけることで血管炎が生じます。 腎臓では半月体形成性糸球体腎炎、肺では毛細血管炎や肺胞出血を来します。
4. 症状(どんな症状が出るか)
- 発熱、倦怠感、体重減少
- 関節痛・筋肉痛
- 血尿・蛋白尿、むくみ(腎炎)
- 息切れ、血痰(肺胞出血)
- 皮疹(紫斑など)、末梢神経障害
5. 検査(どのような検査をするか)
- 血液検査:MPO-ANCA、炎症反応、腎機能、貧血など
- 尿検査:血尿・蛋白尿の有無、尿沈渣
- 胸部CT:肺出血や間質性陰影の評価
- 腎生検:半月体形成性糸球体腎炎などの所見確認
6. 診断(どのように診断するか)
MPO-ANCA陽性、臓器病変(腎炎・肺病変など)、生検所見などを総合して診断します。 結節性多発動脈炎や他のANCA関連血管炎との鑑別も行います。
7. 主な合併症(起こりうる別の病気・障害)
- 急速進行性糸球体腎炎による腎不全
- 肺胞出血による呼吸不全
- 末梢神経障害、皮膚潰瘍
8. 治療(どのように治す・抑えるか)
- ステロイド大量療法(パルス療法を含む)で急性炎症を抑えます。
- シクロホスファミドやリツキシマブなどの免疫抑制薬を併用します。
- 重症の肺胞出血や腎障害では、血漿交換療法を行うことがあります。
9. 予後(今後の見通し)
早期から集中的に治療することで生存率は向上していますが、 高齢者が多く、再発や感染症のリスクも高いため、慎重な管理が必要です。 腎機能や肺機能の長期フォローが重要です。