肉芽腫性多発血管炎

肉芽腫性多発血管炎(GPA)は、耳鼻・肺・腎臓などに炎症と肉芽腫をつくるANCA関連血管炎で、 以前はウェゲナー肉芽腫症と呼ばれていた病気です。

1. 疾患概念(どんな病気か)

上気道(副鼻腔、中耳)、肺、腎臓などに炎症が起こり、 小〜中型の血管に血管炎と肉芽腫をつくる全身性疾患です。

2. 疫学的知見(どのくらいの人がかかるか)

まれな疾患ですが、日本でも報告が増えています。 中年以降に多く、PR3-ANCA陽性であることが多いとされます。

3. 病態生理(体の中で何が起きているか)

ANCAが好中球を活性化して血管壁を傷つけるとともに、 肉芽腫と呼ばれる炎症性のしこりが形成されます。 これが耳鼻・肺・腎などの臓器を障害します。

4. 症状(どんな症状が出るか)

  • 長引く鼻づまり、鼻出血、副鼻腔炎、鞍鼻変形
  • 中耳炎・難聴
  • 咳、血痰、息切れ、胸痛(肺病変)
  • 血尿・蛋白尿、むくみ(腎炎)
  • 発熱、倦怠感、体重減少

5. 検査(どのような検査をするか)

  • 血液検査:PR3-ANCA、炎症反応、腎機能など
  • 尿検査:血尿・蛋白尿の有無
  • 胸部CT:結節影、空洞病変、浸潤影など
  • 耳鼻科・肺・腎の生検:血管炎・肉芽腫の確認

6. 診断(どのように診断するか)

耳鼻・肺・腎などの臓器障害と、ANCA陽性、生検での血管炎・肉芽腫所見を組み合わせて診断します。 他の感染症や悪性腫瘍との鑑別も重要です。

7. 主な合併症(起こりうる別の病気・障害)

  • 腎不全
  • 肺出血・呼吸不全
  • 難聴、顔面変形(鞍鼻など)

8. 治療(どのように治す・抑えるか)

  • ステロイドとシクロホスファミド、またはリツキシマブによる導入療法
  • 維持療法としてアザチオプリン、メトトレキサートなどを使用
  • 肺出血などの重症例では血漿交換療法を行うことがあります。

9. 予後(今後の見通し)

かつては予後不良の疾患でしたが、免疫抑制療法やリツキシマブの導入により、大きく改善しています。 ただし再発も多く、感染症など治療の副作用にも注意が必要です。