急速進行性糸球体腎炎
急速進行性糸球体腎炎(RPGN)は、数週間〜数ヶ月のうちに腎機能が急激に悪化する腎炎の総称で、 早期診断・早期治療が腎臓を守る鍵となります。
1. 疾患概念(どんな病気か)
糸球体腎炎の中でも、腎機能が短期間に急速に低下するタイプをまとめた臨床的な診断名です。 原因としてはANCA関連血管炎、抗糸球体基底膜抗体症候群、免疫複合体型腎炎などがあります。
2. 疫学的知見(どのくらいの人がかかるか)
高齢化に伴い、ANCA関連血管炎によるRPGNが増えています。 年齢層はさまざまですが、高齢者に多い傾向があります。
3. 病態生理(体の中で何が起きているか)
糸球体の毛細血管が、自己抗体や免疫複合体などによって強く傷つけられ、 半月体と呼ばれる病変を形成しながら急速に破壊されていきます。
4. 症状(どんな症状が出るか)
- 数週間〜数ヶ月の間に進むむくみ、尿量減少
- 血尿(赤褐色尿)、蛋白尿
- 倦怠感、食欲低下、息切れ
- 血圧上昇
- 原因疾患に伴う症状(血管炎、肺出血など)
5. 検査(どのような検査をするか)
- 血液検査:腎機能(Cr)、炎症反応、ANCA、抗GBM抗体、補体、自己抗体など
- 尿検査:血尿・蛋白尿、円柱
- 腎生検:半月体形成性糸球体腎炎の有無、原因検索
- 胸部画像・血液ガス:肺出血の有無など
6. 診断(どのように診断するか)
腎機能が短期間で悪化していることと、腎生検で半月体形成性糸球体腎炎を確認し、 併せて原因(ANCA関連、抗GBM抗体、免疫複合体など)を特定します。
7. 主な合併症(起こりうる別の病気・障害)
- 透析が必要となる末期腎不全
- 肺胞出血(血痰・呼吸不全)
- 高血圧・心不全
8. 治療(どのように治す・抑えるか)
- ステロイド大量療法(パルス療法)
- シクロホスファミドやリツキシマブなどの免疫抑制薬
- 抗GBM抗体陽性例や重症肺出血例では血漿交換療法
- 腎不全に対して透析療法が必要となることもあります。
9. 予後(今後の見通し)
治療開始のタイミングと腎障害の進行度により予後が大きく変わります。 早期に治療を開始できれば腎機能の温存が期待できますが、 治療後も腎機能と原因疾患の再燃を長期的にフォローする必要があります。