抗糸球体基底膜抗体症候群

抗糸球体基底膜(GBM)抗体症候群は、腎臓の糸球体と肺の毛細血管を標的とする自己抗体により、 急速進行性腎炎と肺出血を来す病気で、グッドパスチャー症候群とも呼ばれます。

1. 疾患概念(どんな病気か)

糸球体基底膜と肺胞基底膜に対する自己抗体が産生され、 腎炎と肺出血を生じる自己免疫疾患です。 腎障害が急速に進行することが多く、早期治療が必須です。

2. 疫学的知見(どのくらいの人がかかるか)

まれな疾患で、若年男性と高齢者の二峰性にみられることがあります。 喫煙やウイルス感染、溶剤曝露などが契機になると考えられています。

3. 病態生理(体の中で何が起きているか)

抗GBM抗体が糸球体と肺胞の基底膜に結合し、補体活性化を通じて細胞傷害がおこります。 腎臓では半月体形成性糸球体腎炎、肺では肺胞出血を来します。

4. 症状(どんな症状が出るか)

  • 血尿・蛋白尿、むくみ、尿量減少
  • 息切れ、血痰、呼吸困難(肺胞出血)
  • 倦怠感、貧血

5. 検査(どのような検査をするか)

  • 血液検査:抗GBM抗体、腎機能、貧血、炎症反応
  • 尿検査:血尿、蛋白尿
  • 胸部画像:肺胞出血の有無(すりガラス影など)
  • 腎生検:基底膜沿いの線状IgG沈着と半月体形成性糸球体腎炎

6. 診断(どのように診断するか)

血清中の抗GBM抗体陽性と、腎生検での線状IgG沈着、臨床像(急速進行性腎炎、肺出血)を総合して診断します。 ANCA陽性が併存することもあり、その場合は治療方針に注意が必要です。

7. 主な合併症(起こりうる別の病気・障害)

  • 末期腎不全による透析導入
  • 重症肺出血による呼吸不全

8. 治療(どのように治す・抑えるか)

  • ステロイド大量療法とシクロホスファミドによる免疫抑制
  • 血漿交換療法で血中の抗GBM抗体を除去
  • 腎不全に対しては透析療法を行うことがあります。

9. 予後(今後の見通し)

治療開始時点の腎機能が予後に大きく影響します。 早期に治療を開始できれば腎機能を残せる可能性がありますが、 進行した状態では透析が不可避となることもあります。 肺出血のコントロールも重要です。