サルコイドーシス
サルコイドーシスは、原因不明の全身性肉芽腫性疾患で、 肺やリンパ節、目、皮膚、心臓などさまざまな臓器に「肉芽腫」と呼ばれる小さなしこりができる病気です。
1. 疾患概念(どんな病気か)
免疫反応の異常により、全身の臓器に非乾酪性肉芽腫が形成される病気です。 肺門リンパ節腫脹と肺病変が代表的ですが、目・心臓・皮膚・神経などにも病変が生じることがあります。
2. 疫学的知見(どのくらいの人がかかるか)
若年〜中年の成人に多く、男女ともに発症します。 日本では比較的頻度の高い肉芽腫性疾患の一つです。
3. 病態生理(体の中で何が起きているか)
何らかの抗原刺激に対してT細胞が活性化し、マクロファージが集まって肉芽腫を形成すると考えられています。 肉芽腫は臓器の構造と機能を妨げ、さまざまな症状を引き起こします。
4. 症状(どんな症状が出るか)
- 無症状で胸部レントゲンの異常影として偶然見つかることも多い
- 咳、息切れ、胸部不快感(肺病変)
- 目の充血・かすみ・視力低下(ぶどう膜炎)
- 顔面や四肢の皮疹、結節性紅斑
- 不整脈、失神(心サルコイドーシス)
- 倦怠感、発熱、関節痛など
5. 検査(どのような検査をするか)
- 胸部レントゲン・CT:肺門リンパ節腫脹、肺野病変
- 血液検査:ACE、可溶性IL-2レセプター、カルシウムなど
- 眼科検査:ぶどう膜炎や網膜病変の有無
- 心電図、心エコー、心臓MRI、PET:心サルコイドーシスの評価
- 組織生検:リンパ節・肺・皮膚などから肉芽腫の確認
6. 診断(どのように診断するか)
画像・臨床所見とともに、組織で非乾酪性肉芽腫を確認し、 結核や真菌症など他の肉芽腫性疾患を除外して診断します。
7. 主な合併症(起こりうる別の病気・障害)
- 肺線維症による呼吸不全
- 視力障害
- 心筋障害・不整脈・心不全
- 高カルシウム血症
- 神経サルコイドーシス(脳神経障害など)
8. 治療(どのように治す・抑えるか)
- 症状が軽く自然に改善傾向の場合は経過観察のみとすることがあります。
- 肺・心・眼・神経などの臓器障害がある場合はステロイド治療を行います。
- 長期治療が必要な場合には、免疫抑制薬を併用することがあります。
- 心サルコイドーシスでは不整脈に対してペースメーカーやICDが必要となることがあります。
9. 予後(今後の見通し)
多くの患者さんで自然寛解または軽い経過をたどりますが、 一部では慢性化して肺線維症や心障害など重い合併症を来すことがあります。 臓器障害の程度に応じて、長期にわたるフォローが重要です。