小児外科・小児泌尿器科

診療方針

小児外科・小児泌尿器科の対象患者様は新生児から15歳までですが、当院では16歳以上でも小児外科・小児泌尿器科の関連疾患の患者様には積極的に対応しています。ご紹介いただく地域の先生方との連携を大切にし、患者様にできる限り寄り添いながら診療を行うように心がけております。
当科の強みは、ひとつの診療科を受診するだけで、ヘルニア、虫垂炎、幽門肥厚症などの小児外科疾患のみならず、水腎症、膀胱尿管逆流、尿道下裂といった小児泌尿器科疾患の外来・手術治療に対応できる点です。また、排泄については排便と排尿は切っても切れない間柄です。外来診療では夜尿症(おねしょ)、昼間の尿失禁や便秘などの手術以外の治療にもひとつの診療科で対応しているのが当科の特徴です。

当科の特徴

小児外科疾患:よくみられる疾患

鼠径ヘルニア、臍ヘルニア、急性虫垂炎、腸重積、肥厚性幽門狭窄症、肛門周囲膿瘍、皮下腫瘍などの一般小児外科および先天性疾患術後などの患者様

小児泌尿器科疾患

急性陰嚢症、陰嚢水腫、精索水腫、停留精巣、移動性精巣、水腎症、膀胱尿管逆流、尿道下裂、神経因性膀胱、卵巣嚢腫、外性器異常、排尿障害など

内視鏡外科 低侵襲手術

鏡視下手術は小児外科分野でも積極的に導入されており、傷が小さいために痛みも少なく、術後の回復が早いという利点があります。当院でも様々な疾患に対して鏡視下手術を行います。低侵襲で着実な術式を行うことを常に念頭に置き、合併症なく早期退院できるよう治療を決定していきます。その中で当院では難しく、より高次医療機関がベターであると判断した場合は責任をもってご紹介させていただきます。

その他、便秘、夜尿等でお困りの患者さんや腹痛、血尿などで精査が必要な患者さんについても診察させて頂きます。

当院が経験豊富な小児泌尿器疾患に対する低侵襲外科的治療

当院では、小児泌尿器科疾患の全般に対して最も安全で確実な手術治療を提供することを重視しておりますが、近年の著しい技術革新にともなって、あらためて当院が得意とする手術もあります。それらのいくつかをご紹介します。

【膀胱尿管逆流症】
 膀胱尿管逆流症グレードⅡ-Ⅳに対する内視鏡的デフラックス注入療法(SMHIT)

【停留精巣】
 経陰嚢式停留精巣根治術

【尿道下裂】
 重症型尿道下裂に対する一期的尿道下裂根治術

【先天性水腎症】
 後腹膜鏡併用小切開腎盂形成術

【難治性の夜尿症/昼間尿失禁】
 男児(晩期発症型)後部尿道弁に対する内視鏡切開術

膀胱尿管逆流症

膀胱尿管逆流症グレードⅡ-Ⅳに対するSMHIT

多くの原発性膀胱尿管逆流症の患者様には当院では非手術的治療をお勧めしておりますが、中には手術治療が必要なケースもあります。手術治療には、開腹手術、内視鏡的デフラックス注入療法、腹腔鏡手術ならびにロボット手術があります。その中でもっとも低侵襲(手術時間が短い、痛みが少ない、入院期間が短いなど)な治療は内視鏡的デフラックス注入療法です。しかしながら、図1に示しますように短期(術後3ヵ月)の膀胱尿管逆流の治癒率が低く長期の再発率が高いことが一般的に問題にされてきました。当院では術後3年経過しても再発率が極めて低い手術方法であるSMHITを実施しています(図2)。国際分類Ⅱ度~Ⅳ度の膀胱尿管逆流に対して有効です。入院期間は2泊3日です。

【図1】
一般的なデフラックスの成功率

【図2】
当院のデフラックスの成功率

停留精巣

軽症停留精巣に対する経陰嚢式精巣固定術

停留精巣は男の子の100人に1人に認められ手術が必要です。陰嚢の底にない精巣を陰嚢の底まで降ろし、そこに固定する手術方法です。一般的に停留精巣の手術(経鼠径式精巣固定術)では鼠径部と陰嚢部に2カ所のきずができます。当院では、陰嚢部のきずだけで十分に陰嚢の底に精巣が固定できそうな“軽症”停留精巣に対して“経陰嚢式精巣固定術”を行っています。経鼠径式精巣固定術と比較したこの術式の利点は、①手術時間が短い、②きずが少ない、③精管(精子が通る道)を損傷しにくい、の3つです。①手術時間は片側15-20分程度、両側で30-40分です。体に対する負担が小さいです。②きずは陰嚢のきずだけで、目立ちませんし、術後の痛みも少ない印象です。③経鼠径式では、精管の周囲を手術中に剥離(剥がす)ため、精管を損傷し、将来的に精管が閉塞するといった合併症があります。しかしながら、経陰嚢式では手術操作による精管への影響が少ないです。欠点は軽症停留精巣の症例のみが適応になることです。現在まで、固定した精巣が再び上昇して再手術が必要になった症例はなく、術後経過は良好です。入院期間は2泊3日です。

経陰嚢式精巣固定術

尿道下裂

重症型尿道下裂に対する一期的尿道下裂根治術

尿道下裂形成術は小児泌尿器科領域の中では難易度が高く合併症が多い手術です。合併症を克服するための様々な術式が報告されています。特に、陰茎の曲がりが強い、あるいは尿道の出口が陰嚢や会陰部に開口する重症型尿道下裂に対しては一回の手術で根治させる一期的手術を採用する施設は少なく、多くの施設では二回の手術を行う二期的手術を行っています。
当院の重症型尿道下裂に対する一期的尿道下裂根治術の成功率は80%です。入院期間は2週間前後です。

先天性水腎症

後腹膜鏡併用小切開腎盂形成術

先天性水腎症の多くは生後の経過観察中に自然に治ります。しかしながら、なかには経過観察中に腎臓の機能が悪化する場合や発熱、血尿、腹痛、腰部痛などの症状が出現する場合があり、そのような場合には手術が必要になります。
手術の方法は腎盂形成術と呼ばれ、狭い部分を切除した後、腎臓の腎盂(尿が集まる漏斗状の部分)と尿管を新たに吻合し直す方法です(図)。腎盂形成術には開腹手術、鏡視下(腹腔鏡)手術およびロボット支援下手術がありますが、当院では、開腹手術による直視下の正確かつ精密な腎盂形成術が小児では最も確実であると考えているため、開腹手術を行っています。従来は4歳未満の患者さんで3cm、4歳以上で5cm前後のおキズで手術を行っていましたが、最近はあらゆる年齢層の小児の患者さんに対して開腹手術と鏡視下手術を組み合わせた1.5㎝~2cmのおキズで行う後腹膜鏡併用小切開腎盂形成術を行い、安全性と身体的負担軽減の両立を図っています。また、多くの施設では初回手術で体内に入れたカテーテルを術後2-3ヵ月に2度目の麻酔をかけて抜く処置が必要ですが、当科の手術ではこのカテーテルを使用せずに初回手術を行うことが多いため、麻酔回数が減らせ患者様の負担を軽減できます。入院期間は3日から7日です。

腎盂形成術

皮膚切開の大きさ

皮膚切開の大きさ

難治性の夜尿症/昼間尿失禁

男児(晩期発症型)後部尿道弁に対する内視鏡切開術

昼間尿失禁(昼間の尿のちびり)や夜尿症(おねしょ)に対しては行動療法や薬物治療といった内科的治療が有効ですが、なかには内科的治療に抵抗性で難治性のものがあります。男児における難治性の夜尿症および昼間尿失禁の研究にわれわれは取り組んできました。その結果、後部尿道弁(尿道が先天的に狭い病変)がその原因に関係し、病変を内視鏡を用いて切開し尿道の口径を大きくすること(手術時間30分)によって夜尿症や昼間尿失禁が治癒することを確認しました。入院期間は2泊3日です。

内視鏡切開術

診療実績(2023/12/15時点)

外来患者数 再来患者数 入院者数 OPE件数
2022年 48 412 26 22
2023年 195 811 107 108

スタッフ紹介

役職 氏名 専門分野 認定医・専門医
小児外科・小児泌尿器科医長 小林 めぐみ 小児外科
小児泌尿器科
医学博士
日本外科学会専門医 指導医
日本小児外科学会専門医 評議員
日本小児泌尿器科学会 認定医
日本周産期・新生児医学会認定外科医
日本医師会認定産業医
難病指定医 小児慢性特定疾病指定医 身体障碍者福祉法指定医
経肛門的洗腸療法講習会修了
小児外科・小児泌尿器科医師 阿部 陽友(きよとも) 小児外科 日本外科学会専門医
小児外科・小児泌尿器科医師 關根 沙知 小児外科 医学博士
日本外科学会専門医
日本小児外科学会専門医
難病指定医
小児慢性特定疾病指定医
身体障碍者福祉法指定医
小児外科・小児泌尿器科非常勤医師 中村 繁 小児泌尿器科 前自治医科大学とちぎ子ども医療センター小児泌尿器科准教授
医学博士
日本泌尿器科学会専門医 指導医
日本小児泌尿器科学会認定医 評議員
日本泌尿器内視鏡・ロボティクス学会 内視鏡技術認定医