2020年1月に第二種感染症指定医療機関病院として新型コロナウイルス感染症患者の受け入れを開始しました。多くの陽性者を受け入れてきた中で、「物資」「診療体制」「院内対策」について振り返りたいと思います。
陽性者を受け入れた直後には感染対策に必要なマスクやガウン等の物資が次々と不足し、マスクは4~5日に1枚の配布、ガウンはカッパを代用することとなりました。本来、ガウンは1回毎に破棄しますが、物品が足りなかったため1日1枚の交換となり正しい感染対策が実施できない状況でした。対応に苦慮していたところ、多くの方々から物資を寄付していただき、危機を乗り越えることが出来ました。物資を寄付してくださった皆様には深く感謝しております。
病棟の様子。防護服を着用して患者さんの対応に当たります。
診療体制については、有熱者の外来受診が困難になったため、新型コロナウイルス感染症に関する問診票を作成しました。感染者数が多い時期は、正面玄関にトリアージセンターを設置し、来院する患者・家族の記入済問診票を確認し診療場所の割り振りを行いました。発熱や咳などの症状がある方や流行地域から来た方は新型コロナウイルス感染症に罹っている可能性を考え、一般外来ではなく有症外来へ案内しました。有症外来はガウンや手袋、N95マスク、フェイスシールド等を着用した職員が対応しました。自力歩行が可能な患者は非接触で診察が出来るタブレット外来に案内しました。現在も診療する場所を分け、来院する患者や職員の安全および安心できる環境づくりに努めています。
玄関前に「トリアージセンター」を設置、職員総出で来院される方すべての健康状態等をチェック、感染防止に努めました。
受け入れ当初、職員は新型コロナウイルスの感染経路が不明だったことや未知のウイルスによる恐怖を感じていました。「自分が家に帰る事で家族にうつしてしまうのではないか」という不安の声も聞かれました。それでも、使命感を持って病気に罹患した患者の医療を行いたいと奮闘していました。新型コロナウイルス感染症に関する手順書を作成し、病院全体で新型コロナウイルス感染症に対する感染対策の取り組みについて会議を行いました。そこで、栃木県の警戒度レベルに合わせて院内の感染警戒度レベルごとの感染対策(新型コロナウイルス感染症流行期BCP)を考え、流行状況に合わせて実施しました。新型コロナウイルス感染症の感染経路や治療が明らかになるにつれ、院内の対策も変更しました。現在もBCPや手順書を共有することで、職員が新型コロナウイルス感染症の感染対策で不安を感じたときには、いつでも確認できるようになっています。
陰圧式ストレッチャー:動けない患者さんはこちらで病室まで運びます。
新型コロナウイルス感染症の大きな波を何度も経験し、第3波は陽性者の受け入れ人数が多く、一部の高齢者は重症化しました。その後、新型コロナウイルスワクチンの普及により徐々に重症化する患者層が変わりました。新規感染者数が増えたことにより宇都宮市でも自宅療養者が増加しました。栃木県対策本部や保健所、近隣医療機関と連携し、入院の受け入れミーティングを行い、入院が必要な患者をタイムリーに割り振り、治療を必要とする患者を速やかに入院へつなげることができました。第5波は、さらに陽性者数が増加し、第3波と同様に地域と連携しました。新しい点滴治療(抗体カクテル療法)も積極的に行いました。感染が拡大するにつれ、職員の家族など身近な方が濃厚接触者になるケースが増加したため、職員の健康管理を強化しました。従来行っていた毎日の検温はもちろん、感冒症状がある職員に関しては各部署長から感染制御チームへ連絡をもらい、就業制限をお願いしました。また、家族など身近な人が検査を受けた場合、必ず感染制御チームへ連絡をもらい状況の確認を行いました。職員一人ひとりが自覚を持ち行動したことで院内クラスターを発生することなく、第5波を乗り越えることが出来ました。
これからも新型コロナウイルス感染症はなくなりません。新規感染者数の変動はありますが、同じ状況が続くと思います。日々地道に感染対策を行い、今後も必要な医療を提供したいと思います。
さだまさしさんが設立した「風に立つライオン基金」他、こちらに掲載されているもの以外にも、様々な団体、企業、個人の方々から励ましのお言葉と寄附を戴きました。